ケイヤク結婚
―綾乃side―
「ごめん、待った?」

 私は待ち合わせのファミレスに入って、里美の姿を見つけると声をあげた。

 店内のウィンドウから、外を眺めていた里美が顔を上げると、笑顔を見せた。

「少しだけね」

「打ち合わせが長引いちゃって」

 私はコートを脱いで畳みながら、里美の向かい側に腰を落とした。

 水曜日の午後。午前中に、結婚式の打ち合わせをして、午後から里美とランチをする約束をしていた。

 大輝さんは、どうしても外せない仕事があるとかで、午後から出勤すると前々から言っていた。

 それもあって、私は里美とランチする約束ができたのだ。

 大輝さんはとても忙しい人だと思う。さすが出世街道をいく人だと感じる。

 いつも遅くまで仕事をしているし、水曜日に休みを取っても、必ずと言って良いほど会社から電話がかかってくる。

 大輝さんがいないと仕事が回らないのだろう。

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