ケイヤク結婚
 今日も何度か電話があった。午後からの仕事についてだと思う。

 打ち合わせが長引かなかったら、大輝さんもどこかでランチをとって、それから会社に向かう予定だったみたいだけど。

 式の打ち合わせがギリギリまで伸びてしまったせいで、ランチもせずに会社の人と待ち合わせて直接、外回りに向かうみたいだった。

 ウィンドウから、大輝さんが見えた。

 黒のロングコートの裾が風になびいている。

 隣には、スラリとしたスタイルの良い女性が並んで立っている。

 鞄の中から、茶封筒を渡して、それからコンビニの袋を差し出している。

 袋の中から、ゼリー状の栄養補給ドリンクが出てきた。

 大輝さんはそれを開けると、歩道を歩きながら一気に飲み干した。

 本当に、忙しそう。食事もままならないなんて、大変だ。

< 72 / 115 >

この作品をシェア

pagetop