ケイヤク結婚
 大輝さんが腕時計で時間を確認しているところで、私たちの前に来た。

 ウィンドウの横を綺麗な女性と並んで歩いている。

 美男美女で、すごく良く似合うカップルに見える。これから仕事に行くと言うよりも、デート中と言ったほうがしっくりきそうな二人だ。

 ふっと大輝さんの視線が動いて、ファミレスのウィンドウに向く。

 窓越しだけど隣同士になった私に向かって、大輝さんが軽く微笑んでくれた。

 そのまま大輝さんが通り過ぎていく。

「あの人が、綾乃の旦那さん?」

「え?」

 私は目の前に座っている里美が、柔らかい表情で聞いてきた。

『旦那さん』という慣れない響きに、ドキリとする。

 そうだよね。結婚したんだから、大輝さんは私の旦那になるんだよね。

「そ、そう」と私は里美に返事をしながら、頬がカーッと熱くなるのを感じる。
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