ケイヤク結婚
「私ね。騙されてても良いって思ってるんだ」

「ちょっと!」

「まあ、聞いてって。侑とのこと、里美も知ってるでしょ? あれから恋愛に夢中になれなくなった私を見てきてる。だからこそ心配してくれてるのはわかる。けど、このままじゃ私はいつまでたっても結婚が出来ないと思う。そりゃあ、里美みたいに恋愛して、好きな人と結婚するのがベストだとわかってるよ。でも今の私じゃ、それが出来ない」

「綾乃……」

 里美が、私の手をぎゅっと握ってくれた。

 暖かくて、ほっとする体温だ。

「私、騙されてないと思うよ」

「綾乃、だからそれは……」

「初めて会ったとき、大輝さんが言ってたから。『女は嫌いだ。愛を求められる結婚は無理だ』って。だから騙されてないと思う」

 私がにっこりと笑うと、里美がポンポンと手のひらを優しく叩いた。

「そういえば、綾乃の口から新垣君の名前を聞いたの久々な気がする」

「そうだね。思い出したくなくて、ずっと口にしなかったから」

 私はドリンクバーを取りに行くね、と里美に告げて飲み物を取りに行った。

 ホント。友達に侑の名前を言ったのってすごく久々だね。
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