ケイヤク結婚
 思い出したくなくて。まだ好きだって認めたくなくて、ずっと口にしなかった。

 里美や他の友達たちも、それをわかってて敢えて口にはしなかったもんね。

 私がいるときは、恋愛話って禁句って感じになってた気がする。みんな、私に気を使ってくれてたんだなあって今ならわかる。

 私はアイスティーをコップに入れると、テーブルに戻った。

「実はさ。今だから言えるんだけど。綾乃が携帯番号も変えて、アパートも引っ越したときあるじゃない? 新垣君と別れた直後に」

 私はストローでアイスティーを吸いながら、こくんと頷く。

「あのとき、新垣君から何度も何度も連絡があったんだよね。綾乃の居場所を教えてくれって」

「そうなんだ」

 探してくれたって、侑の嘘じゃなかったんだ。本当に探してくれてたんだ。

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