ケイヤク結婚
「凄い必死だったから、教えてもいいかな?ってちょっとぐらついた時もあったんだけど。でも、綾乃がどんな思いで決断したのかを知ってるからさ。教えなかったんだけど……もしかして教えた方が良かったのかな?」

 私はストローから口を離すと、首を横に振った。

「ううん。侑とは別れて良かったんだと思ってる。別れなくちゃ、きっとまだズルズルと関係を保って、ツライ想いをしてただけだから。それについ最近、侑と再会したよ」

「え? 大丈夫なの?」

 里美が目を丸くした。

「大丈夫。侑には、婚約者がいるし。私が結婚してるのも、侑は知ってるから」

「そう、なんだ」

「ん。大輝さんの職場のライバルが侑だったの」

「ええ?」

 里美が、大きな声をあげた。ハッとして喉を鳴らした里美が、「ちょっと!」と私の手の甲をバシッと叩いた。

「まるで昼ドラみたいな展開じゃない」

「ほんと、昼ドラみたい。もうこの先一生、侑とは会うことはないだろうって思ってたから、再会したときはびっくりしたよ」

「びっくりどころじゃないよ。驚愕だよ」

 里美がバンっとテーブルを叩く。

「お互いに相手がいるし。今さら、何があるってわけでもないけどね」

 私はウィンドウに目を向けた。

 何もないって思いたい。もう、侑とは何も起きて欲しくない。

 ただの大学のときの友人として接したい。もう忘れたい。過去の想いを断ち切りたいの。

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