ケイヤク結婚
―大輝side―
「なんでこんな日に式の打ち合わせを入れているのよ。ギリギリじゃない」

 俺のデスクから書類を持ってきたゆかりが、目尻を持ち上げて怒っている。

「それなら、今日しか空いてないと急きょ言ってきた先方に文句を言ってくれ。俺は水曜以外と先に連絡してあったのに」

「はい。書類を持ってきてあげたわよ。これでしょ。それとお昼、まだなんでしょ? そこのコンビニで買っておいたから、口に入れて置いて。こっちの打ち合わせの最中に腹の音が鳴るなんて、恥ずかしいから」

「サンキュ」

 俺はゆかりから書類と、コンビニ袋を受け取った。

 袋の中に入っている栄養補給飲料を手に取ると、一気に飲み干した。

「一応、書類は確認しておいたけど。もう一度、大輝の目でも見ておいてよ」

「ああ。わかってる。タクシーを拾ったら、車内で確認する」

 俺は腕時計を見やる。先方との約束の時間には、ギリギリで間に合いそうだ。

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