ケイヤク結婚
「せっかくの美人顔がカッチカチだな」

 クスクスと笑い声が聞こえて、私は顔をあげた。

 大輝さんが上司だと思われる人に話があるからと呼ばれて、私は会場の隅で立っていると侑が声をかけてきた。

 隣には、可愛らしい女性が立っている。

 あれ? この女性……。

「桜木様?」と私は侑の隣に立っている女性に声をかけた。

 もしかして。彼氏って侑のこと?

 じゃあ、ネイルのときに話してた男性って……。

 私はゆっくりと侑に視線を向けた。

 私と同じような想いはして欲しくないって思ってたのに。

「瑠衣を知ってるのか?」

「ええ。この前、お店に来たから。爪のネイル、私がやったの」

 侑に喜んで欲しくて、彼女はネイルをしに来たのよ。わかってる?

 可愛くなってるネイルに気がついて、褒めたのかしら?
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