ケイヤク結婚
「ふうん。綾乃のお店に」

 侑が桜木様の顔をちらりと見やる。

 桜木様は、背中を小さく丸めると、侑の腕から離れて後ろにさがった。

「ちょっと、なんで睨むの?」

 私は桜木様を見ている侑の肩をバシッと叩いた。

「別に。偶然にしては、ちょっと……って思ったから」

 侑が、私に視線を戻した。

「考え過ぎでしょ」

「なあ。新しい飲み物、持ってこようか?」

 侑が私に話しかけてくると、「私が、持ってきますね」と桜木様がパッと走り出した。

「二人きりで話がしたいな、綾乃」

 侑が私にピトッと肌を寄せて、声をかけてくる。

「やめて。話すことなんてない」

「まだ、俺のこと好きだろ?」
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