ケイヤク結婚
 あんな可愛い婚約者の子を捕まえておいて、昔の女にも手をだそうだなんて。

「強がるなって」

「大輝さんが誰とお付き合いしてようが構わないわ」

 私は侑が教えてくれた真っ赤なドレスを着ている女性に視線を送った。

 見覚えのある女性だった。

 ファミレスのガラス越しに見た女性だ。大輝さんと一緒に、歩いていたとても綺麗な女性。

 そっか。だからあの時、並んだ二人を見て違和感を覚えなかったんだ。

 お似合いのカップルってすんなり思えたんだね。本当に付き合っていた二人だったから。

「綺麗な人だね」

「綺麗だけじゃないから、周りの女たちから酷い嫉妬も受けてるみただけどな」

「会社なんてそういうところよ」

 私はフッと笑った。会社のなんたるかも知らない私が言えた言葉じゃないわね。

「ったく。綾乃は変わってねえな。ライバルの女に向かって、普通『綺麗な人だね』なんて褒めるかよ」

 侑が腕組みをして、苦笑した。
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