ケイヤク結婚

「素直に言っただけよ」

「素直に相手を褒められるかよ。ライバルなんだぞ？　敵を褒めてどうすんだよ」

「認めるべきところは、認めるべきだわ」

「綾乃だって、負けてないぜ。綺麗さで言うなら」

「いえ。負けてる。あの人は、厚化粧ってほど化粧をしてない。きちんとしたポイントを掴んで、きちんと化粧はしてるけれど。凡庸な顔を隠すための化粧じゃない。さらに綺麗に見せるための化粧よ。私とは違う」

　そうよ。あの人は、素顔でも綺麗。

　私はただの凡庸な顔。どこにでもある普通の顔よ。

「謙遜するなよ。俺は綾乃の素顔も知ってるが……」

「昔の話はしないで」

「なあ。俺、変わったよ。今なら綾乃を愛せる。綾乃だけを」

　侑が真っすぐに私の顔を見て言ってきた。