ケイヤク結婚
「猪突猛進な妹で申し訳ない」

「い、いえ」

 私は首を横に振って、カフェラテを一口飲んだ。

 どうしよう。二人きりになっちゃったよ。何を話せばいいのかわからないっ!

 大輝さんが、理沙ちゃんがさっきまでいた席に腰を下ろした。

「理沙がさっき言っていた新垣という人物と俺は社内で、出世頭として互いに争っている。今、転勤の話が持ち上がっているんだが、そこは所帯持ちじゃないと行けないと言われている場所だ。噂では、俺か新垣かのどちらかに話がくるだろうというのだが、俺には妻はいない。妻になるような女性も今のところいない。軍配は新垣になるだろう」

「お見合いをしたから…ですか?」

「それもある。俺に、結婚の意思がないからだ。勝ち目のない戦いだ」

「どうしてですか? 大輝さん、格好良いからお嫁さんになりたいと考える人はいると思いますけど」

「俺は女が嫌いだ。少しも興味がない。だから、愛を求められる結婚はできない」

「はあ」と私は返事をして、マグカップに入っているカフェラテを飲んだ。

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