ケイヤク結婚
「抵抗するなよ。今、騒ぎになったら、恥をかくのは綾乃の旦那だぞ」

 私は瞳を開けると、抵抗している力を一気に抜いた。

 そうだ。大輝さんには迷惑はかけられない。

 出世のために、結婚して、今日のパーティに呼ばれているんだから。

 大騒ぎになってしまったら、恥ずかしい思いをするのは大輝さんなんだ。

 私を連れて来なければ良かった…なんて思って欲しくない。

 私は侑に引っ張られるまま、歩き出した。

 エレベータに乗ったところで、侑にキスをされる。

 腰に手を回されて、侑の体温が腰から伝わってくる。

 固く閉じた唇を、舌でこじ開けられ、侑の熱い想いが流れ込んできた。

「こんなの……良くない」

 侑の唇が離れたところで、私が呟いた。
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