ケイヤク結婚
 やめて。こんな侑を見たくない。私たちはもう終わったのに。

 私が侑のもとを去った時点で、私たち二人の未来は失ったと言うのに。

 今さら、キスされても嬉しくない。逆に悲しくて、胸が苦しいよ。

 侑とこんなことしたくないのに。

 目的の階に到着すると、侑が私の手を繋いだまま降りた。

 5メートル歩いたところで、侑が足を止めて、部屋のドアのロックを解除した。

 オレンジ色の温かみのあるライトがポッと室内を明るくしてくれる。

 棚に置いてある可愛らしい鞄を見て、私は足をぴたっと止めた。

「一人で泊ってるわけじゃないのね?」

 きっと桜木様の荷物だよね?

 婚約者と同じ部屋をとっておいて、よく私を部屋に入れられたものね。

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