ケイヤク結婚
 私が桜木様の立場にいたら、すごく心が痛い。

「侑、間違ってる。こんなの良くない!」

 私は侑の手を振り払った。

「侑には、すごく可愛い婚約者がいるじゃない。どうして私なの?」

 侑が私の顔を見た。

「ずっと好きだった。今も……」

「それは違う。私が逃げたから。きちんと決着をつけなかったから、諦め切れてないような気がするだけ」

「違う。綾乃を愛してる。わかってないのは、綾乃のほうだ。綾乃さえ受け入れてくれれば、俺はすぐにでも婚約破棄をする覚悟くらいできてる」

 侑が私をドンと押して、ベッドに押し倒してきた。

「ちょっと、やめて!」

「言っただろ。俺は綾乃を愛してるんだ。二人きりになれたんだ。することは一つだ」

「嫌だっ」

 私の上に乗りかかる侑の頬を引っ張っ叩いた。

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