ケイヤク結婚
 侑が私の手首を掴むと、ぐっと上から圧力をかけてきた。

「痛い……やめて、侑」

 こんなの嫌よ。

 やっとの思いで侑への気持ちを切り替えていったのよ。

 侑をどんだけ好きだったか……侑は知らないでしょ?

 私がどんな思いで別れを決めたか。その覚悟も知らないで。

 私は侑に抱かれたくなんてないの。やめて。

「なあ、俺にしろよ。夏木なんてやめろって。離婚しろ」

 侑のキスが私の首筋に落ちた。チュっと音がして、私は身震いをする。

「やめて。私、離婚はしない」

「離婚しろよ」

 侑の足が動き、私のドレスの裾を持ち上げた。
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