ケイヤク結婚
―大輝side―
「お綺麗な奥様ですねえ。どこで知り合ったんですか?」
「仕事人間かと思っていたら。きちんとヤルことはヤッてるんだな」

 下世話な連中ばかりだ。

 俺の恋愛話を聞いて、どうするつもりなのか。聞かせられるような恋愛をしているわけでもないし。

 話す内容なんて無いけど。

 俺は上手く誤魔化しながら、上司たちに挨拶まわりをしていく。

「あの、少しいいですか?」

 か細い声がして、俺は振り返る。

 可愛いらしいドレスに身を包んでいる女性を見て、すぐに桜木さんだとわかった。

 新垣の婚約者だ。

 なぜ俺に声をかけるのだろうか?

「何でしょうか?」と、俺は手に持っていた白ワインを口にした。

「夏木さんって、冬馬綾乃さんと結婚をしたんですよね?」

「ええ。先日、入籍しました」

「あのっ。離婚してもらえませんか?」

 桜木さんが、ぺこりと勢いよく頭を下げた。

 ちょ……この子は、一体、何をしたいんだ?
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