君のための嘘
「もう決めたんだ 僕は恵まれた生活をしてきた 少しでも役に立ちたいんだ」


「ラルフ……」


夏帆は頬に触れるラルフの指が気になっていた。


「妻になった人に一緒に行こうなんて言えないよ」


夏帆はその時思った。


きっとその時が来たら、私も一緒に連れて行ってと言うだろうと。


「……ラルフと結婚……します ううん、本当に私と結婚で良いの?」


「もちろん、君が良いと言うのなら結婚して欲しい……ありがとう 夏帆ちゃん」


******


ベッドに横になると、両親の事を考えてしまった。


孤児院から拾ってくれ育ててくれたのに裏切っていると思うと胸が張り裂けそうなほど痛んだ。


ごめんなさい、ごめんなさい……パパ、ママ。


ラルフと結婚したらふたりに申し訳なくて、もう二度と会えない。


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