君のための嘘
ラルフをガラス越しに見る夏帆の耳に女性のひそひそと話す声が聞こえてきた。


「さっきの花嫁見た？可愛くないわよね～　新郎は超カッコいいのに、不釣り合いであの子が彼女じゃ彼は勿体ないわ」


声は少し空いているドアからのよう。


新郎は超カッコいい……ラルフの事だよね……って、私の事を言っているんだ。


スタッフにバカにされ、夏帆はすぐにウェディングドレスを脱ぎたくなった。


フィッティングルームに引き返そうと、足を向けた。


その時、ラルフの高揚した様な声が夏帆を呼び止めた。


「夏帆ちゃん！良く似合っているよ　ちゃんと見せてくれるかい？」


フィッティングルームに向かう足が止まり、夏帆は仕方なく振り返った。


「サイズはぴったりのようだね　デザインも華やかで女らしくていい　素敵だよ」


夏帆は耳を疑った。


ラルフは本当にそう思っているの？


そうだとしたら、美的センスがおかしいよ。



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