君のための嘘
「可愛いよ、ずっと着ていてもらいたいくらいだ」


ラルフが褒めれば褒めるほど、夏帆は恥ずかしくなって穴があったら入りたい心境になっていく。


「僕の婚約者は可愛いと思いませんか?」


ラルフが近くにいたスタッフの女性に言っている。


「やめてっ!ラルフ、似あってなんかいないし、可愛くなんかない」


夏帆は金切り声をあげていた。


「夏帆ちゃん……?」


ラルフから笑みが消え眉を寄せて、じっと夏帆を見る。


「……ご、ごめんなさい 着替えて来ます」


夏帆はウェディングドレスを手繰り寄せると、先ほどの部屋に向かった。


「夏帆ちゃん!」


ラルフが呼び止めるのもかまわずに、夏帆はフィッティングルームのドアを開けて入った。


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