君のための嘘
「具合が……熱は?気分は?」


ラルフの手が夏帆の額に触れる。


夏帆はじっと立ったままで、俯いている。


「熱は……なさそうだ すみません、今日はこれで帰ります」


ラルフは女性スタッフに言うと、夏帆の身体を抱えるようにして建物から出た。


震える肩を抱き寄せながら車へ向かうラルフは何があったのだろうと考えていた。


夏帆は俯いたままで何も話さない。


******


「疲れが溜まっていたのかな?」


車を走らせながらラルフがまだ俯いている夏帆に言う。


「……ごめんなさい 写真は撮りたくないんです」


「夏帆ちゃん?」


思いがけない言葉を言う夏帆をラルフは見た。



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