君のための嘘
「全然似合っていなかったのに……ラルフだってそう思ったでしょう!?」


「夏帆ちゃん!」


ラルフはハンドルを左に切ると路肩に車を停めた。


「何を言っているんだ!そんなこと思っていない 僕は可愛いと思ったよ どうしてそんな事を言うんだい?」


車を停めたラルフはシートベルトを外し、夏帆に向き直る。


「ラルフと……ラルフと違い過ぎるから、写真は嫌ですっ!」


「夏帆ちゃん!何が僕と違い過ぎるんだい?」


「……あそこのスタッフが言っているのを聞いちゃったんです 可愛くない、新郎と不釣り合いだって……」


苦悩の表情の夏帆に、ラルフの胸が痛くなった。


「不釣り合いなんかじゃないよ そんな事を言うのは幸せそうなカップルに嫉妬したからだよ」


ラルフは夏帆の長い黒髪に手を伸ばした。


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