君のための嘘
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ノックをしたのはラルフだった。


「夏帆ちゃんの様子はどうですか?」


「あの子は今時珍しいくらい自分に自信がないわね どこで見つけてきたのよ 気に入っているからそばに置いてこんなことまでしているんでしょう?」


リリさんの洞察力は相変わらず鋭いな。


たしかに気に入っているから、行動を起こしている。


「寝不足みたいでウトウトするもんだから、ラルフたんに寝かせてもらえないのね?って言ったら真っ赤になっちゃって、ほんと可愛いわあの子」


男に触れられればあたしにはすぐ分かるのに。


「夏帆ちゃんをあんまりからかわないでくださいよ 本当に大事な子なんだ」


「まあ!ラルフたんからそんな言葉を聞くとは思わなかったわ!大事にし過ぎて逃げられない様に気を付けなさいね?」


「そうですね……ところでリリさん、ウェディングドレスはお持ちですか?」


「このあたしを何だと思っているの?ラルフたん、あたしは美の総合プロデュースをしているのよ」


リリはつんと澄ました表情で言った。


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