君のための嘘
「何を言っているんですか?バッグが無くなったのでしょう?」
「あっ!」
夏帆は思い出して声をあげた。迎え人から逃げることで、バッグが紛失したことをすっかり頭から抜け落ちていたのだ。
そうだった……。
降ろされても警察にいくしかない。イコール、ここまで逃げたのに、霧生家に行くことになってしまう。
青ざめていく夏帆の顔色を見て、彼は口を開いた。
「自己紹介しましょう 僕は早坂 ラルフと言います」
「え?ラ、ラルフさん……?」
その名前は彼にぴったりの様に思えた。
「母がイギリス人なんです さん付けはしないでください ラルフで結構です」
ラルフのブラウンの髪は柔らかそうで、嫌味にならない程度にくしゃっとカールしている。タクシーの窓から入る日の光がブラウンの髪にあたり、金髪のようにも見える。瞳は髪の毛よりも少しだけ濃いブラウン。見るたびに心臓がドキッとしてしまうほど整い過ぎている顔。まるでギリシャ神話のアポロン像が、抜け出て来たみたいな姿を前にして夏帆は声も出せないくらいに困惑していた。
「あっ!」
夏帆は思い出して声をあげた。迎え人から逃げることで、バッグが紛失したことをすっかり頭から抜け落ちていたのだ。
そうだった……。
降ろされても警察にいくしかない。イコール、ここまで逃げたのに、霧生家に行くことになってしまう。
青ざめていく夏帆の顔色を見て、彼は口を開いた。
「自己紹介しましょう 僕は早坂 ラルフと言います」
「え?ラ、ラルフさん……?」
その名前は彼にぴったりの様に思えた。
「母がイギリス人なんです さん付けはしないでください ラルフで結構です」
ラルフのブラウンの髪は柔らかそうで、嫌味にならない程度にくしゃっとカールしている。タクシーの窓から入る日の光がブラウンの髪にあたり、金髪のようにも見える。瞳は髪の毛よりも少しだけ濃いブラウン。見るたびに心臓がドキッとしてしまうほど整い過ぎている顔。まるでギリシャ神話のアポロン像が、抜け出て来たみたいな姿を前にして夏帆は声も出せないくらいに困惑していた。