君のための嘘
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翌日、ラルフが会社へ出かけ、一通り掃除を済ませた夏帆はソファに座り昨日の事を思い出していた。


お好み焼き屋に入り鉄板のあるテーブルに案内されたラルフが落ち着かない表情を見せたのを見逃さなかった。


どうしたのかと聞いてみると、自分で焼くお好み焼き屋に入ったのは初めてだと言う。


やっぱりラルフはどこか世間からずれている気がする。


孤児院にいた時は、キャベツとほんの少しの豚肉で焼いて食べたものだ。


そうだ……、あの頃は小さい子たちに簡単な料理は作ってあげていたっけ。


懐かしんでいると、ラルフは店員の女性に話しかけている。


ラルフの頼みに、店員の女性は嬉しそうに快く目の前でお好み焼きを焼いてくれた。


昨日は楽しかった。


またラルフとどこか出かけたいと思った夏帆だった。


休みになったら出かけようと言ってくれたけれど、私ばかりに時間を取るわけにはいかないだろう……。



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