君のための嘘
スーパーの人事の男性は、意外にも明日から来てほしいと言った。


すんなりと品出しの仕事にありつけて小首を傾げる所だが、場所柄外国人の客が多いので英語が話せる人材を求めていたと言う。


ウキウキしながらラルフのマンションへ戻ると、家政婦が夕食を作っていた。


その後、夏帆は家政婦の側で作るのを見て過ごし、ラルフの帰りを待ちわびていた。


家政婦が帰った後、少しして玄関から物音がした。


夏帆はまるでご主人様を待ちわびた犬が駆け寄るように玄関に行った。


「お帰りなさいっ!」


「ただいま 出迎えてくれるなんて嬉しいな」


「家政婦さんがおでんを作ってくれたの 着替えている間に温めておくね」


夏帆はテーブルに置かれたカセットコンロを点けた。


ラルフが私服に着替えて現れる頃には、もともと温まっていた土鍋の中身はぐつぐつと音をたてていた。


その他に家政婦さんは具がたくさん入った太巻きを作ってくれていた。


こちらも酢飯の匂いと海苔の匂いで食欲を誘う。



< 162 / 521 >

この作品をシェア

pagetop