君のための嘘
ラルフは席に着くと、夏帆はお皿におでんを取り分けようと土鍋の蓋を開けようと手を伸ばした。


その瞬間、はじかれた様に手を引っ込める。


「熱っ!」


「大丈夫かい!?」


指が土鍋の蓋の持ち手をそのまま触ったせいだ。


「だ、大丈夫」


そう言いながらも目は涙目で、指をふうふうと口で風を送っている。


「すぐに冷やした方がいい」


ラルフは夏帆の腕を掴むとキッチンに連れて行き、赤くなった指を流水の中へ手を入れた。


「っ、冷たいです……」


手を引っ込めようとすると、ラルフの強い力で押さえられる。


「もう少し冷やした方がいい」


少しして流水から手を出すことを許されて夏帆はホッとした。


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