君のための嘘
「悩みなんてないです」


「それなら良かった 乾杯しよう」


ラルフは極上の色をしたシャンパンを二つのグラスに注ぐ。


「僕たちの結婚に乾杯」


ラルフは夏帆の持つグラスに自分のグラスを軽くあてた。


「……乾杯」


乾杯の気分ではないけれど、もう後には引き返せない。


助けてくれたラルフの為に努力をしよう。


「……明日……」


そこまで言った夏帆は口ごもる。


「明日?」


ラルフは形の良い眉毛を片方上げて夏帆を見る。


「……美由紀さんにわかってもらえるようにがんばります」


< 173 / 521 >

この作品をシェア

pagetop