君のための嘘
「きゃっ!」


引っ張られて腰を下ろした場所はラルフの膝の上。


「ご、ごめんなさいっ!」


ギョッとなった夏帆は立ち上がろうとした。


「夏帆ちゃん、動かないで」


「でもっ」


「やっぱり僕たちにはスキンシップは必要なようだね」


ラルフの手が夏帆の黒髪に伸びて一房を弄び始めた。


「綺麗な黒髪だね 染めようと思わなかったの?」


一房を口元に持って行かれると、夏帆の高鳴る心臓は不規則に暴れてくる。


「きょ、興味なくて」


「君のような初心な子、僕は初めてなんだ 君の反応を見ているとこっちまでドキドキしてくる」


髪を弄っていた手は離され、今度は夏帆の手を持ちラルフは自分の心臓の上に置いた。


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