君のための嘘
「ラルフっ!?」


「ほら、触ってみてよ 不規則に暴れているだろう?」


ラルフの胸の上から手を離そうとしたけれど、押さえつけられて夏帆は観念した。


「君を前にすると、どうして良いのかわからなくなるんだ」


確かに……私の胸みたいにラルフの胸もドキドキしている……。


胸に手を置いたまま、ラルフの顔に視線を移した夏帆。


色素の薄い瞳に魅せられたように視線が動かせない……。


ラルフの瞳に映っているのは……アメリカに住んでいた頃の私じゃない……。


「落ち着いてきた?」


夏帆の顔を見てわかったのか、ラルフは笑みを浮かべて聞いた。



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