君のための嘘
「ちょっと失礼するよ」


夏帆は自室に向かうラルフの背中を見て小首を傾げた。


どうしたんだろう……。


「あれ~? 俺、なんか変なこと言っちゃったかな? ちょっと見てくるよ」


侑弥は明るく言うと立ち上がった。


「それなら私がっ」


夏帆は立ち上がった。


「いや、いいよ。俺、話もあったんだ。ちょっと行ってくるよ」


侑弥は夏帆を手で制するように動かすとラルフの部屋に向かった。





「夏帆さん、座って。話がしたいと思っていたの」


ぼんやり突っ立っている夏帆に美由紀が声をかける。


「えっ? は、はい……」


侑弥の後姿から美由紀へと夏帆は視線を移した。


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