君のための嘘
「あ、安奈ちゃん寝ちゃったんですね。重くないですか? 私のベッドに寝かせますか?」


「私のベッドって? ラルフと一緒に寝ていないの?」


思わず出た夏帆の言葉に美由紀が鋭く突いてくる。


「ね、寝てます! 寝ています。この家に来た時に使ったベッドの事なんです」


苦し紛れに夏帆は慌てて言った。


「そう……まさか、この結婚が私の為だったらと思うと――」


「私はラルフを愛しているんです。美由紀さんの為じゃないです」


美由紀の言葉をさえぎり夏帆は強く言った。


その言葉に美由紀は辛そうに顔を歪めた。


彼女の思う所は何なのか……。


夏帆は彼女がラルフを愛しているのだと思った。


「……こんなに可愛いお子さんがいるのだから、家庭を壊さないでください……ステキな旦那様もいるのだから……」


「……」


美由紀は答えなかった。


「紅茶を淹れかえますね」


夏帆はその場にいられなくて立ち上がりキッチンへ向かった。


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