君のための嘘
「えっ?」


持っていた箸を置き、後ろめたさで右手の傷を隠すように手を置いた。


「その隠した手の絆創膏だよ」


「な、なんでもない。ちょっとカッターで切っただけ」


「見せてくれる?」


静かに言うラルフだから自分が過剰反応しているだけなのだろうと、左手を差し出した。


「手が荒れているね。指先ががさついている。こんなになってどうしたの? 」


夏帆の指先をラルフの指がなぞるように動く。


ビクッとして手を引っ込めようとしたが、ラルフに強く押さえられて動かせなかった。


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