君のための嘘
「ラルフ、離して……」


「うちには食洗機もあるんだからこんなに荒れるのはおかしいと思うけど?」


夏帆はラルフの顔を伺うようにして見ていた。


ラルフはアルバイトを知っていて言っているの?


彼の表情からは何もわからない。


「ハンドクリームは塗っている?」


「う、ううん……」


「だめだよ、きれいな手なんだから。もしかして持っていない?」


「う、うん……」


「コンビニに行ってくるよ」


ラルフがイスから立ち上がった。


「自分で行くから! まだ食事の途中だし。食べたら行ってくる」


まだ食事の最中なのに買いに行こうとするラルフの手を握った。


「……じゃあ、食べたら一緒に買いに行こう」


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