君のための嘘
夏帆は食べながらアルバイトの事を黙っているのはやっぱり良くないよね……などと考えていた。


でも反対していたから……。


どうしよう……。


きれいな箸使いで食べるラルフを食べるフリをしながら盗み見る。


いまだにラルフが夫だと実感が沸かない。


私達は紙切れの上だけの事。


美由紀さん一家を招待した日以来、ラルフは私を同居人のように扱っている。


昼間、私が何をしているのかも関心がないようだった。


だからアルバイトを今なら話しても大丈夫かなと考えて、夏帆は神妙な面持ちでラルフを見た。


「ラルフ」


「ん? なんだい?」


「言っていなかった事があったの」


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