君のための嘘

行きたいところ

「ラルフのお金は欲しくないっ」


「夏帆ちゃん、僕たちは夫婦だよ? 財産を共有するのは当たり前だ」


淡々と言うラルフ。


「一文無しの私を拾ってくれて感謝している……夫婦になったけれど……私達は財産を共有するほどの関係じゃないでしょう」


「籍を入れているのだから、十分にその権利は君にある。離婚しないで、僕が万が一死んだら君にすべて行くんだ。このマンションも、僕の通帳に書かれてある金額、株もね」


「やめてっ! なんだか私達おかしい話をしている。私はただ働きたいだけなのに」


夏帆は叫ぶように言った。


「……ごめん。言い過ぎたよ。食べよう。まだ食べ終わっていない」


夏帆は黙って席に座った。


気まずい空気が流れ、夏帆は早く部屋に戻りたいと料理を口に運びながら思っていた。


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