君のための嘘
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夏帆が自室に戻ってからラルフは疲れたようにため息を漏らした。


籠の鳥にはさせたくない。


そう思っていたのに、僕が君を籠の鳥にさせようとしていた。


彼女は自由でいて欲しい。


それは心から願う事だ。





それからしばらくしてからラルフは夏帆の部屋のドアをノックした。


手にはハンドクリームを持っている。


すぐにドアは内側から開いた。


「ラルフ……」


パジャマに着替えている夏帆は戸惑いの表情でラルフを見た。


「これを使って」


ラルフが渡したハンドクリームを見て夏帆は目を丸くした。


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