君のための嘘
ラルフが自室に戻り、ひとりだけになった夏帆は深いため息を吐いた。


仲直りをしにきてくれたのは大人だと思う。


だけど、そっけなく帰ってしまったのは寂しいと思ってしまう。


私に魅力が無いんだなとつくづく思ってしまう。


「ハア……」


いっそのこと、私からラルフを誘惑しようか……。


恥ずかしいことを考えている自分に我に返り、大きく何度も首を横に振る。


私ったら、何を考えちゃっているのっ!


最近、街を歩けばカップルが身を寄せ合いながら歩いているから影響されちゃっているんだ。


12年ぶりになるのかな……日本のクリスマス……雪が降ったらいいな。


昔の悲しい思い出が、思い出されて夏帆は顔を歪めた。


あの頃、どんなに両親を恋しく思っただろう……。


私はどこの誰?


なぜ、私は捨てられたの……?


いつの間にか流していた涙は止められなかった。



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