君のための嘘
「雪、積もるかな~?」


ラルフが驚いた顔が、夏帆には分からなかったようで、無邪気に空を見上げて言っている。


まったく……夏帆ちゃんにはドキドキさせられっぱなしだ。


一緒に雪見酒を飲もうとは……。


雪見酒を一緒に飲むという事は、一緒に湯船に浸からなければならない。


きっとそこを夏帆ちゃんは考えていないのだろう。


ラルフが予約した部屋は露天風呂付きの個室。


一緒に入るつもりでそこを予約をしたわけではないが、僕の中にどんどん入ってくる夏帆ちゃんを意識しないではいられない。


だめだ、夏帆ちゃんを抱いてはいけないんだ。


「ラルフ? どうしたの?」


夏帆の声にラルフはハッとなった。


「い、いや。なんでもないよ。タクシー乗り場へ行こう」


ラルフは夏帆をタクシー乗り場へと促した。


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