君のための嘘
旅館に到着し、若草色の着物を着た上品そうな笑みを浮かべた女将と5名ほどの仲居に、ふたりは出迎えられた。


旅館の中に入ると、夏帆はキョロキョロと辺りを見廻している。


旅館が珍しいのだ。


仲居に案内された部屋は旅館の奥まった場所だった。


落ちついた趣のある室内。


夏帆はなんて素敵なんだろうと思いながら中ほどへ入る。


仲居は荷物を部屋の隅に置き、お茶を淹れ始めた。


「夏帆ちゃん、お茶を飲もう。座って」


ラルフに言われて、夏帆は座り心地の良さそうな座椅子に座った。


薄ピンク色の着物を着た仲居はふたりにお茶と菓子をもてなし、館内の案内をして出て行った。


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