君のための嘘
あ然となりその場に佇む夏帆はやっとの事で頭を動かした。


その場所は露天風呂とガラスで仕切られた部屋。


部屋の真ん中に大きなベッドが置いてある。


かなり大きいベッドだが、一つしか置かれていない。


「夏帆ちゃん、どうしたの?」


パウダールームのドアから動かないでいる夏帆にラルフは後ろから声をかけた。


次の瞬間、夏帆の肩がビクッと跳ねる。


「夏帆ちゃん?」


振り向いた夏帆の顔が戸惑っているのがわかる。


「お部屋に露天風呂が……」


「え? ああ、イブでこの部屋しか空いていなかった。他にも館内に男女別の外風呂があるはずだよ」


ラルフはいかにも気にしていないように努めて答えた。



< 235 / 521 >

この作品をシェア

pagetop