君のための嘘
「う、うん……あと、ベッドが一つしかないの……」


ラルフは夏帆の頭の上からベッドルームを見た。


「本当だ。予備の布団があるはずだから夏帆ちゃんはベッドで眠るといい。僕はさっきの和室で寝るから」


サラッと答えるラルフに夏帆は「自分は過剰反応し過ぎているのではないか」と思ってしまった。


「いいの。ラルフがベッドに寝て?」


平常心を保つように心がけて、夏帆はラルフに笑みを向けた。


こんなのはなんでもない。


私はラルフが好き、キスして欲しいと思っているし、その先だって……。


ハイスクール時代、バージンを捨てる友達がほとんどだった。


女の子が集まれば、すぐにボーイフレンドの話になり、セックスの話になった。


経験のない夏帆は、ただ聞いているだけだった。


だから、セックスがどんなものなのかはわかっているつもりだ。


だけど……ラルフにその気はなさそうで、夏帆から離れガラスの扉を開けて露天風呂へ近づく。


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