君のための嘘
「素敵な模様だね?」


寄木細工……いろいろな単位模様を合わせ、薄く切ったものを木に貼ったものだ。ひみつ箱などが有名で、小さな箱は仕掛けが2回からある。解除しないと開かない仕組みになのだ。


「うん……」


夏帆は懐かしさと、あの頃の思いで目頭が熱くなっていた。


夏帆の震える返事にラルフは顔を覗き込むようにして見た。


「夏帆ちゃん……」


ポケットからハンカチを取り出したラルフは夏帆の目にそっとあてる。


「ごめんなさい……泣くつもりはないのに……」


涙を止めようとして、夏帆は下唇を強く噛む。


それを見ていたラルフの長い指が唇に触れる。


「下唇を噛むのは止めるんだ。傷がつく」


「私……」


孤児院にいた時の事を話してしまいそうになる。


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