君のための嘘
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ふたりは旅館の周りを散歩していた。


あの部屋にいると落ち着かない気分にさせられるので、夏帆が提案したのだ。


旅館から10分ほどの所に温泉街があるが、自然とふたりの足は静かな田舎道を歩いていた。


「寒くないかい?」


夏帆に聞くラルフの息が白い。


「うん、帽子も手袋もあるから大丈夫」


ラルフは夏帆がプレゼントしたマフラーを首に巻いてくれていた。


茶色の地のマフラーに良く似合うこげ茶のダウンジャケットを着ている。


身長が高いせいもあるが、お尻までのダウンジャケットを着たラルフは足の長さが引き立っている。


「すごい、もう雪が積もっているね」


夏帆は草の上に1センチほど積もった雪を掴む。


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