君のための嘘
「うわっ、さらさら……」


「夏帆ちゃんはロス育ちだったね? 雪はやっぱり珍しい?」


雪で遊ぶ夏帆にラルフは口元を緩ませながら聞く。


「うん。連れて来てくれてありがとう。ラルフ」


雪の付いた手袋を両手で、パンパンと叩いた夏帆は満面に笑みを浮かべてラルフを見た。


「僕もいい息抜きになったよ」


「そうだ! ラルフっ、雪だるま作ろうよ!」


ちょうどふたりは広い空き地にいた。


ラルフは一瞬「えっ?」と思ったが、雪を丸め始めた夏帆を見て思わず和む。


子供のように瞳をキラキラさせ、一生懸命になっている夏帆。


本当に20歳を過ぎているとは思えないほどだ。


「ラルフ、何してるの? 早く手伝って? そんなに大きくなくていいから雪だるまの下を作ってね」


ラルフは夏帆に課せられた雪だるまの土台を作り始めた。


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