君のための嘘
色々な想いが心の中で渦を巻いて夏帆は苦しかった。


美味しそうな目の前の料理を少しずつ口に運ぶが、胸がいっぱいですぐに食べられなくなる。


これって……恋煩いみたい……。


ハイスクールの時に憧れた男子がいた。


思いを告げる所まではいかなかったが、あの時もこんな気持ちで……ううん、もっと胸が痛い。


「この食事、口に合わないかな? 箸が進んでいないね?」


「えっ?」


ラルフに話しかけられて夏帆は我に返った。


「箸が進んでいないけど?」


「た、食べますっ」


夏帆は手元のオレンジジュースを飲むと、お刺身に箸を伸ばした。


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