君のための嘘

露天風呂への仕切りのガラス窓へ近づくと、こちらに背を向けた夏帆を見つけた。


長い黒髪を一つにまとめアップにされており、白いうなじが湯気を通しても見える。


このまま姿を見せない方がいい……。


ラルフはそう思っても、夏帆の後姿から目を逸らせなかった。


華奢なうなじを見ただけで欲情しそうだ。


夏帆を抱きたい気持ちが強くなる。


引き返そうと動いた時、湯船の中の夏帆がくるっと向いてラルフと目が合う。


ラルフを見て、すぐにホッとした表情になった夏帆だ。


「ラルフ」と夏帆の口が動く。


ガラス越しで夏帆の声は聞こえない。