君のための嘘
そんな夏帆の様子に知ってか知らずか、ラルフはとっくりを持ち、おちょこに注いでいる。


「はい。どうぞ」


おちょこを手渡されると、指が触れ合う。


ラルフの指先は夏帆に甘くビリッとした電気のような感覚を走らせる。


思わず手を引いてしまいそうになる所を我慢して受け取る。


「雪景色に乾杯」


ラルフがおちょこを少し上にかかげる。


「……乾杯」


夏帆もラルフに習って、おちょこを掲げてから口に持ってくる。


日本酒は初めてだった。


ワインのような感覚で一気にゴクッと飲んでからその味にびっくりして咳き込む。


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