君のための嘘
「大丈夫かい?」


「ごほっ、びっくりした……」


口の中に広がる日本酒の辛み。


喉が焼けつくようにピリッとして、胃の中へ落ちていく。


胃の中がカアッと熱くなるのがわかる。


「日本酒は初めてだった? 少しずつ飲んだ方がいいよ」


ラルフが笑みを浮かべながら言う。


「はい」


「飲める? もう少し飲むかい?」


夏帆の返事を待たずに、もう一度ラルフは空いたおちょこに日本酒を注いだ。


そしてラルフもグイッと飲むと、注いだ。


夏帆はラルフのその所作に目を奪われた。


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