君のための嘘
少し上を向いて飲むと、喉がゴクッと波打つ。


なんと言うのか、お酒のCMを見ているような感覚。


似合い過ぎて、キレイで……そこだけ空気が違うよう。


しかし、その人はすぐ近くにいる。


頭がぼうっとなってくる。


これはお酒のせいだと、考えられなくなりつつある頭で思う。


ラルフから、離れなくちゃ……。


座りながら後退しようと足を動かした時、かかとがバスタオルに触れ踏んでしまいバランスを失った。


「きゃっ!」


「夏帆ちゃん!」


仰向けに湯船に入る所を、腕をラルフに掴まれてまぬがれる。


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